2005.12.29/「ぼくだけの花だと思ってもいいの?」






 玖渚にある日、青は好きか、と訊いた。
 青色の少女が青色を嫌っていたら、それはとても皮肉だなと思ったからだ。
 ちなみに哀川さんに以前問うたところによると、彼女は好んで赤色を身につけているらしい。まぁそうじゃなきゃ、あそこまで徹底して赤にこだわったりはしないだろうな。
「いーちゃんの質問はいつも唐突だね」
「質問っていうのはそういうもんだろ。で、どうなんだ?」
「んー……」
 玖渚は首を傾げ、しばらくうんうんうなった後(真剣に見えるが実は何も考えていない仕草だ)、うん、とひとりでうなずいた。
 ぼくのつくった簡単な料理をぱくぱくと食べながら、答える。
「好きだよ」
「へぇ」
「ただし、僕様ちゃんの青色だけ」
「………それはそれは」
 ずいぶんと、とあきれたようにため息を吐こうとすると、玖渚は意外にも言葉を続けた。
「あと、いーちゃんと見る青いものは好き」
「…………」
「僕様ちゃん、外に出ないからあんまりだけど──たまーに外出するときにさ、空見て青くて、となりにいーちゃんがいたら、僕様ちゃん、好きだな。その青」
「………そか」
「ん」
 こくこくうなずいて、玖渚は飲み物を一口口内に含み食べ物を喰べ尽くす。
 そして、ふと、言った。
「いーちゃんは、好き?」
「うん?」
「青色」










 ────青色、好き?










 そう、問われるのは──青色の少女に問われるのは、
 哀川さんならきっと、あのシニカルな笑みを浮かべただろうごとく、ぼくを曖昧な、微妙な気分にさせた。
 それでもぼくは答えた。
 ぼくは、きみに答えた。
















「好きだよ」
 玖渚は何も言わずに、ただ、笑みをふかくしただけだった。
 それはとても可愛らしい笑顔だった。










青い花だけが





ぼくを狂わせる。






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