2005.12.29/「あいしているよ」
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彼は目を開けた。
けれど閉じていてもいっしょだったので、結局、伏せた。
「……………、」
しかしやがて耐えられずに──零崎双識は目を開く。
……何だかひどくさむかった。
冬だから、だろうか。
ずり落ちた掛け布団を肩まで上げて、ふぅ、と双識は息を吐く。それでもさむかった。
暖房器具を何よりも先に弟と妹の部屋につけてしまい、結果余裕がなくなり、双識と軋識の部屋には暖房をつける事ができなくなったのが原因のひとつだろう。
弟の人識はひどい放浪癖のあるやつだから、暖房なんていらないだろうと──軋識は言ったけれど。
まぁ、結局は自己満足だ。
何にしても寒い。
人識はまたどこかに行ってしまっているし、部屋を借りようか。
けれどそこの移動までがまた、さむい。
「さむい、なぁ……」
ひとりでつぶやく。
ひとりだからさむいのだろうか。
それが要因だろう。
声もかすれて、ふるえている。
「さむいよ……」
それに、暗い。
夜はまだ明けないのだろうか。
それともいまは朝で、あるいは昼で、この部屋だけが暗いのだろうか。
双識のまわりだけ──暗いのだろうか。
双識はふるふると首を振って、シーツを握りしめた。
「ひとしき」
やがてちいさな声で名前を呼ぶ。
家族の名前を。
「舞織ちゃん」
名前をつぶやくと──すこしだけ、暗闇が晴れる気がした。
「アス」
みんな、
みんなみんなみんな、
私の大切な家族。
家族がいるんだ。
家族がいる───
「大丈夫……」
だから大丈夫だと、双識はつぶやいて、また、目を伏せた。
今度はさきほどよりもさむくなかった。
それにからだの力をすこしだけ抜いて──だんだん抜いていって──双識はつぶやき続ける。
「大丈夫……私には家族がいるから……家族がいるから……」
────だからこの闇が晴れれば大丈夫。
私には家族がいるから、
「……大丈夫」
ささやくように繰り返して、双識は睡魔を手繰り寄せた。
夢のなかに堕ちるために。
か細いなきごえ
ひかりのなかで私はまた笑えるから、どうか、はやくそのひかりに導いて。誰か私の手を引いて連れて行って。
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