2006.3.9/「お星様に願い事?」






「人識くんは、どう思いますか?」
「んー……何がだよ」
「話聞いてくださいよー。女の子の話です」
「ああ、だってつまんねぇし。お前さぁ、俺の好み言ってなかったけ?」
「背の高い女のひと?」
「とりあえずそれは第一条件。お前の話聞いてても、そんな女出てこねぇし」
「そりゃ、わたしがいた学校の話ですから。人識くんより背の高い子はたくさんいたと思いますけど……憶えてないしそもそも知りませんよ、身長まで」
「うわ、友達いねぇ奴」
「いましたよ!っていうか人識くんに言われたくないです」
「おいおい、俺は友達たくさんいたぜ?中学生の頃とかとくにな」
「………嘘くさいです」
「嘘だし」
「…………………」
「で、話の続きは?」
「もういいです。人識くんに話そうとしたわたしがバカでした」
「何だよ、話せよ。ひまつぶしだ、聞いてやる」
「……………じゃあわたしは間を持たせるため話します」
「さっさと話せよ」
「人識くんって、絶対もてませんよね」
「……言いたい事はそれだけか?」
「わ、わ、ナイフ持ち出さないでください!もー、だから、学校で話してたんですよ。女子と、殺人犯について」
「何だよ、女子ってそんな話すんのか?」
「そのときはとくべつですよ。学校のちかくで殺人事件があったとかで……そんな話になったんです。殺人犯って何考えてるんだろうね、みたいな」
「は、平和だな」
「ええ、平和でしたよ。自分たちには関係ない、殺されないって思ってたんですから。思っていたからこそ、そういう事を話せたんです」
「で?」
「そのとき友達のひとりが、殺人犯って一度なっちゃったら、もう二度と明るいところに出られない感じがするよねー、って言ったんです」
「何だそれ。傑作だな」
「いま思えばそうですよね。お兄ちゃんとか、今日も昼間っからお買い物とか言って出かけてるし」
「ま、零崎は殺人犯≠カゃなくて殺人鬼≠セろ。兄貴に言わせればよ」
「そうですけど、一般的にはその違いなんてわかりませんよ。殺す事に変わりはないんですから」
「まーな」
「えと、話をもどしますけど──でもそんな話をしていたんです。わたしも何となく、そうだろうな、って感じがしました。追われてる感じがしますから」
「殺人犯」
「そうです」
「べつに、追われてるからって明るいところに行けねぇわけじゃねぇだろ」
「ですよね。でも、それって、そういう意味じゃないのかな、って……ちょっと思いました。みんなが話してる間、口には出しませんでしたけどね」
「ん?」
「明るいところって、太陽が降り注ぐとか、星がきれいな空の下とか、そういう意味じゃなくて──ただ、もっと抽象的な感じの。きれいなひとたちのいる、明るい空間の事なのかな、って。普通の、ほんとうに普通の、そんな場所の事かもしれないって」
「……………」
「うまく言えませんけど」
「………ふーん」
「それだけなんですけど、人識くんはどう思いますか?」
「何とも思わねぇな」
「そう言うと思いました」
「でもちょっと疑問。お前はどうなんだよ。いまはどう思うわけ?その話について」
「いま?」
「そのときはそう思ったんだろ?いまは?」
「いま……いまは、そうですね」
「………………」
「………………」
「舞織」






















「どこにだって行けると思います」
「うん」
「もうあの場所にもどれないだけで、でも、わたしたちはどこにだって行けると思いますよ」
「………いまさらな話だな」
「ですね」









ぼくらは星を掴めない





それでも、進めるよ。






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