SSS


※戯言、狐さん(→明楽さん)


何度も繰り返した失敗の度、必ずやっていた事は──笑われるかもしれないが、架城明楽に語りかける事だった。西東天は絶対的にそうしていた。
彼にとって、それは必要な事で、またやらなければならない事だったのだ。
無論、架城明楽の答はない。
答が欲しいと、思わなかったとは言わない。
しかしなくてもよかった。

















(俺は人間だ)

















そうわかっていた。
だから。



































「───逝くな」
たった一言だけそうつぶやいた。
架城明楽はそれに何か言葉を返したようだった。無理だ、とか、そういう意味合いだったかもしれない。西東天にはわからない事だ。
ただ彼が架城明楽に遺したものはその言葉だけで、もう少し気の利いた言葉は言えなかったのかと今でも思う。それがどんな言葉かはわからないが、逝くな、など、死ぬ人間には重荷以外のなにものでもないだろう。
それでも最期、笑っているように見えた。彼もまた死にかけていた身なので、記憶は確かでもまぶたの裏に残る映像には曖昧な部分がある。架城明楽は笑ったのだろうか。それとも何の表情も浮かべてはいなかったのだろうか。
あきら。
自分の唇がそう動いたことで意識が現実に戻った。ゆっくりと目を開けて、ああそうかここに明楽はいない、と認識する。
(……また、か)
かすかな落胆、けれど希望は失っていない。この世界の終わりを見る希望だなんて、果たしてこの言葉は正しいのかとどこかで思うが、思うだけだった。考える必要などない。
欲しいものはただひとつだ。
それ以外の思考は必要ないだろう。それに今は、思考できない、と思う。
(おまえはいない)
だから、それしか考えられない。
(ふれることはない)
いつか終わってしまうまで。



































お前に会うまで、きっと他の思考はなくなってしまっている。


前にお題用に書いて途中で放棄していたんですが、その間に人間2で明楽さんが登場なさったので没となりました。そんなわけでものすごく半端なおわりですみませ…
2007.8.25


※ツォンルーりはびり!


そうです、それが、正解ですよ。
ツォンにそう言われることがルーファウスのよろこびだった。こどものとき、そりゃ神羅カンパニーのただひとりのご子息だったルーファウスであったから、おそらくあれは英才教育というものだったのだろう、そんなものを受けていた。
かの有名な、という文句が最初につくような教師ばかりに教えられたことは、仕事の上では役立ったがそれ以外で役立つことはすべてツォンに教わったと言っても過言ではない、そうルーファウスは思っている。ルーファウスにひとのぬくもりというものを教えたのはツォンだった。冷酷だと言われようとも、彼に教えられたそれを抱えているのだから自分は決してそれだけではないと確信し、ひとり立つことができた。自身の身よりもルーファウスを守ろうとする人間がいることを教えてくれたのはツォンだ。お守りしますという誓いを受けたときの、よろこびという言葉では表現しきれない感情の名前を、ルーファウスはいまだに知ることができないでいる。
つまり、人間として欠落しているいくつかを、ツォンが埋めてくれたのだと、そういう結論なのだと思う。そんなツォンに、仕事の話が主だったが、幼いときはルーファウスの(今思えば)まだ拙い意見にツォンが「正解」と言われるのはうれしいことだった。ほめられる、認められるよろこび。誰よりもツォンにそう言って微笑まれることがルーファウスに笑顔を与えた。
「好きだ。お前が好きだ」
仕事に関わることが増え、副社長という地位に立ったときにはもうそう言われることはほとんどなかった。ルーファウスは正解を知っていたからだ。当たり前に言えたからだ。その褒め言葉はきっともうバカにしていると思われるだろうからという、ツォンの気遣いの心からわかった。だからルーファウスも何も言わなかった。ただ、これだけ言った。
「お前のものになりたい。だが無理なんだろう。俺はそのうち社長になって神羅を支え、どこかの有力な女と結婚しなきゃいけない。後継者になる子供が必要だ。だからお前のことなんか忘れなきゃならない。ただの幼い錯覚だって理解しなきゃならない」
ルーファウスはそこで言葉を止めた。かたい表情で聞いていたツォンの表情が、そうしてふと緩む。
子供の頃から今まで見た中の、どんなものよりもやさしくて、おだやかな微笑だった。
そして今もツォンは言う。
「そうです」
なつかしい言葉を。
「それが、正解です」
ルーファウスは思った通りの返答に思わず笑った。
ただしそれは、今までのようによろこんだからではなく、なつかしさにこぼれた笑みだった。
ならばこの、お前を想う心は間違いだろうか。それこそ正解をわかっている問いかけを飲み込んで、ゆっくりと息を吐いた。


ツォンルーのなれそめを書きたいのでりはびり。
2007.7.2


html : A Moveable Feast


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