君は蜜より甘いので、
僕は悩まされる。

「………L、」
「ま、……ってくだ、さい、らいと……く」








 抗うような素振りを見せる姿にも欲情する。僕はおかしいのかもしれない。月は思いながらも自分自身の欲情をたしかに感じ取っていた。
 Lを壁に追いつめる。いつもは病的に白い頬が赤く上気して、乱れた事など見た事がない規則正しい呼吸はいまは不規則に肩とともに上下している。耐えるように伏せられたまぶた、触れればやわらかな黒髪。体温の低いからだ、細くてつよく抱きしめれば壊れてしまいそうなそれ。
 何度もキスをして追いつめる。角度を変えて舌を入れて、唾液を吸い込んで呼吸も言葉も封じて、ただ求めるままに。
「その名前で、……呼ばないで、くだ、さい」
「どうして?誰に聞かれるかわからないから……?」
「ちがいます、」





 ………興奮する、





 熱い吐息とともにささやかれた告白に、ぞくりと背筋に何かが走る。月はうっすらと瞳を開けて、潤んだ黒を見せるLに顔を近づけた。吐息が触れ合うほど近づいて、けれど実際は触れ合わない。そのもどかしい距離のまま。
「僕、も」
「………ん、」
「とまらなくなる」
「月くん、」
 名前を呼ばれて、目線を間近で合わせたまま、ふたたび唇が重なる直前にささやいた。
 何よりもあまい睦言のように。
「君を、抱いているんだと思うと」














 ───だから、君の名前を、
 ───L≠ニ、名前を、













「………僕はお前を好きなのかもしれない」
 告げた嘘の在処は、余裕のないキスのなかに溶けて消えた。






                       2005.9.29執筆/2005.10.10掲載
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