ねぇ、さよならと言って。

 ……僕の手で殺したかった。









 彼の死を見て、最初に思ったのはそんな事だったと思う。崩れ落ちる白いからだ。抱き止めるつもりなんてなかった。からだが勝手に動いていた。あとから考えればこれは夜神月≠ニしては正しい行動で、僕は、笑ってしまった。
 お前を殺せたよ、L。
 でもどうしてだろう、僕は後悔しているみたいだ。
(僕の手で殺したかった)
 他の誰でもない僕の手で。








 だって、何度も思い浮かべたんだよ、L。
 君の首をしめるのを。
 君の呼吸をこの手で止めるのを。
 君の血を舐めとるのを。
 君を殺すのを。


















「月!ねぇ、何ぼーっとしてるの?」
 ミサの声に、僕ははっと顔を上げた。
 あわてて微笑を浮かべる。何でもないと答えて、腕を嫌なくらいに引っ張る彼女に内心でため息を吐いた。
(君を殺したかったんだ)
 何度も考えた事を、また考える。
(君を)









 ───僕の手で。
 だって君にさよならさえ言えなかった。
(別れを)
 僕の手で散らせたかった、華。
 もう一度咲かないだろうか、なんて、愚かな事を考えた。










 ………死神だけが僕を見ていた。






                      2005.10.08執筆/2005.10.10掲載
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