走れるおとなとこども

「これは仮説ですが」
「うん」
「あなたがもし死んでいたら」
「泣いた?」







 さきまわりして訊いてみると、返ってきたのはやさしいとさえ言える微笑。
「きっと、そうでした」
「理由が推定できない」
「推理は得意でしょう?」
「お前が相手のゲームはもうおわりだ」
 だからしない、と言うと、Lはやたらと大人びた笑みを月に向けた。それが気に入らなくて眉をひそめ、けれどその仕草がまたこどもっぽいのだと気がついた──
「そうですね。私の負け、ゲームオーバーです」
「……あっさり認めるんだな。意外だ」
 負けず嫌いのお前が、そう皮肉ると、やはりLは笑うだけだった。そのおだやかでやさしい空気にわずかに戸惑う──月はそんな彼ははじめて見た。まるで知らない人間のようだった。
「──あなたはキラだった」
「…………」
「それがわかったから。私は間違ってなかった」
 ───正義は証明されなかったけれど、
「私は……」











「────L?」
 言葉が途切れて、思わず名前を呼んだ瞬間。
「あなたはもうもどれない」
 Lの唇が月のそれに触れて、すぐ間近でささやかれた。
「……私はあなたを見届ける」












 だからさよならです、と、ひどくきれいな微笑とともに彼は告げた。




                      2005.10.08執筆/2005.10.10掲載
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