目が覚めて、温かい腕に抱かれている事に気がつく。
「…………ん?」
ルーファウスは一瞬記憶を探り、すぐに昨夜ツォンの家に泊まったのだと思い出した。
……そういえば昨日は、ひさしぶりに会えたと言って、さらに翌日──つまり今日──がふたり揃ってのものすごくひさしぶりな休日だという事で、何だか常よりも激しく求め合った気が……する。
『………このまま、ずっと』
(…………恥ずかしい事思い出した……)
かー、と顔に熱が集まってくる心地で、ルーファウスは身じろぎしてさらにツォンに密着した。ツォンの体温は、さすがにいまは温かいけれどそれでもルーファウスよりは低い。もとから体温が低いんです、と以前教えてもらった事がある。
(気持ちいい……)
安心して眠りにつける。
その幸福にただ溺れて、ルーファウスはすぐにまた睡魔の世界に誘われた。
音もなくツォンは目覚めて、反射的に時計を確認した。
(………六時か)
いつもなら起きている時間だけれど、腕のなかにしっかりと抱き込んだルーファウスはしずかな寝息を立てているし、何より今日はひさしぶりのふたり揃っての休日だ。これくらいの時間なら、寝坊してもかまわないだろう。
そう思って、ツォンはまた定位置にもどるとルーファウスのからだを抱きなおした。その際にうん、とちいさくうめいてルーファウスが身じろぎしたが、すぐにまた寝息を立て始めたのを見て安堵する。
(……きれいなひとだ)
カーテン越しにわずかに入るひかりに照らされた寝顔を見下ろして、いつも彼を見るたびに思う事を改めて思った。
このひとを抱いている事がときどき信じられなくなる。
───この上司の知らないところで、本当はずっと焦がれていた存在。
積極的に好きだと言ってきたのはルーファウスで、ツォンはまるでそれに押されるかたちでこうしてつきあうようになったけれど、本当は違うのだ。
本当は彼よりも先に、ずっと彼を愛していた。
(あ、)
不意に、その寝顔を見ていて気がつく。いまは見えない青い瞳の目元、そこから頬にかけて、点々とわずかに見えるのは涙の跡だった。
(………泣かせすぎたか)
ひさしぶりすぎて抑制がきかなかった、……なんて、このひとに言ったら怒るだろうか。
それともいつも冷静なお前が、なんて、笑うだろうか。
(……しかし昨夜は本当に可愛らしかった……いやいつも可愛いのだけれど……)
思い返してしまう自身の脳味噌を呪いつつ、さらにすこし顔が赤くなるのを感じながら、ツォンはさら、とルーファウスの金髪を撫でた。
───あなたに関わる事なら、いつだって冷静になれない自分がいる。
このひとの事だから、なおさら冷静にならなければならないのに、それなのに。
「………あなたには、秘密ですね」
ん、とまた身じろぎして、すこし離れた体温にまたすり寄ってくるルーファウスがいとおしくて、笑う。
「────このまま、ずっと……」
つぶやきは半ばでおわり、ツォンはひそやかにルーファウスの額に唇を落とした。
温かいその体温に、いとしさを込めて。
この日曜日が永遠に続けばいいと、夢のなかで祈った。
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